この事例の依頼主
年齢・性別 非公開
相談前の状況
ご相談者としては、婚約が成立しており、それを一方的に破棄されたと認識しているものの、相手は「あくまでも交際関係にあるだけで、婚約は成立していない」として、慰謝料等の支払に応じないため、困っているというご相談でした。ただ、婚約破棄の場合、慰謝料が伸びにくいことから、訴訟では費用倒れになるリスクもあったため、極力交渉段階で話をまとめることを目指して着手することになりました。
解決への流れ
まず請求するにあたり、交渉を相手本人が対応する形になると感情面が前に出てきて、交渉による解決が困難と思われたため、代理人がつくように書面を工夫し、弁護士との交渉になるようにしました。その結果、望んでいたとおり、代理人が就任したことから、証拠や事実を事細かに伝えし、婚約が成立していることや、破棄により損害が生じていることなどを主張しつつ、訴訟になったときのリスクを見据えて、譲歩も含めて対応をしました。そして、相手も婚約破棄を正面から認めはしないものの、金銭解決を図る方向へ対応が変わったことから、折り合いをつけて合意に至り、訴訟を回避しつつ金銭を獲得することができました。ご相談者(ご依頼者)としては、婚約破棄は認めなかったものの、相手に裁判に相当するあるいはそれ以上の金銭的負担をさせ、今回の事実に対して、一定の制裁ができたことで、今回のことを清算して、前に進むことができるようになったご様子でした。
婚約破棄の場合、①婚約が認められるか、②破棄に正当な理由があるか、③損害はいくらかという3つの段階が争われることが多いです。今回は、①の段階で相手が争っていたケースですが、婚約は婚姻とは異なり、婚約の成立を決定的に明らかにする事実を挙げることは難しいです。そのため、指輪の贈与、結婚式(フォトウエディングを含む)、新居の契約、親族顔合わせ、婚姻届の記入など、「普通の交際」から「婚姻関係」に近づける事実を一つ一つ積み上げていく必要があります。なお、これらの事実の前段階(式場見学、新居内覧、顔合わせの予約など)も、婚約を裏付ける補助的な事実になりますが、その事実だけでは弱い場合もあるほか、そもそも書面などで証明ができない場合もあるため、注意が必要です。また、①や②の段階を超えたとしても、一般的に婚約破棄の慰謝料は、低額になる傾向にあります。そのため、裁判になると、弁護士に依頼する費用を考慮するとプラスマイナスゼロや赤字になる可能性もあることにも注意が必要です。そこで、婚約破棄の場合には、いきなり裁判にするのではなく、まずは交渉で解決が図れないかを考えるのが望ましく、そのための方法は一つに限定できませんが、「解決に向けた前向きな交渉の形」を作ることが大事であり、今回のように対弁護士の交渉という形にすることもこの形を目指した方法の一つとなります。今回は、これらが功を奏したケースですが、個々のケースによって、何が証拠になるか、あるいはどのような攻め方が効果的かは変わってきます。ですので、婚約破棄でお悩みで弁護士にご相談される場合には、極力広く情報を伝え、多くの情報から適切な証拠や方法を弁護士と一緒に考えていくことをお勧めします。